ででの日記

好きな話は何度したっていいもんね

血の婚礼4冊を読み比べました ※9/11に3冊から4冊になった

9月15日からシアターコクーンで上演される「血の婚礼」が楽しみです。

horipro-stage.jp

8月10日のマジの婚礼みたいだったトークショーにも参列して、ワクワクが留まることを知りません。

 

原作のある作品をみる時、原作を読んでから観るかまっさらな状態で観るか、迷いますよね。

今回は話がシンプル(なのかな?ほんとに?)らしいけど、原作が戯曲で難しそうだし物語の舞台であるスペインのことを知らないし、なによりあらすじ漫画読んで全然わからなかったので、読んで色々調べておこうと思いました。

 

あらすじ漫画↓

honto.jp

舞台のビジュアルをもとに描かれた舞台のあらすじ漫画って初めてみた。すごい。手厚い。そしてみんな本当に似てる。トークショーの時にも漫画を読んでも思ったけど木村達成さんと早見あかりさんのお顔の造形似てますね。

 

 

血の婚礼を読むその前に

ていうか戯曲ってなに

数年間疑問に思い続け永遠に解決させていなかった「戯曲ってなに」問題。

(※問題にしてるのは私だけです)

 

「戯曲」と聞いて

難しそう

しかイメージがないのですが、血の婚礼を観に行くのにそれじゃまずいな。

 

Wikipediaで調べました。戯曲とは。

戯曲(ぎきょく)は、演劇の上演のために執筆された脚本や、上演台本のかたちで執筆された文学作品。戯曲を書く者のことを劇作家と呼ぶ。

えっ脚本!?そうなの!? 

なんかもっと「詩の戦闘力高めた版」みたいなことだと思ってた。そうか、文章の種類ではなく形式の問題だったのか。

本当だ、今手元にある「血の婚礼」全部が台本みたいになってる!

話してる人の名前が上にあって、セリフやらなにやらがその下に書かれてる。

 

え~~戯曲へのハードル下がった嬉しい~~!

 

そして違うサイトにこんなことも

一般に戯曲は、脚本、台本とほぼ同じ意味で使われるが、戯曲は、作者(→劇作家)の思想性を重視し、文学作品としても鑑賞できるような芸術性をもった作品をさしていう場合が多い。
 それに対して、直接上演を目ざした舞台に直結した作品を脚本・台本という場合が多い。

芸術性をもった作品!作者の思想!なるほど!だから難しいイメージがあったんだ!ガッテン!

いいですね、人生の伏線回収という感じで楽しいです。

 

勉強になりました。

 

血の婚礼3冊読み比べ

※9/11に加筆をして、3冊読み比べから4冊読み比べになりました。4冊目だけ時間が経ってから読んでいます

 

最初に読んだ3冊

血の婚礼、調べてみたら全集に入っていたり1冊で発行されていたり、どれを読めばいいか分からない。

ということで図書館で「血の婚礼」と検索して本当に血の婚礼が収録(収録?)されていそうな本を3冊借りてきました。ありがとう図書館。

 

わからないなら全部読んでしまえばいいじゃないってね。

 

内容については触れないよう気をつけますが神経質な方は回れ右でお願いします。

3冊のうち、発行年が古いものから読みました。

すべて個人の感想です!

 

①てすぴす双書:血の婚礼

書 名:血の婚礼

出版社:未来社

訳 者:山田肇・天野二郎共訳

刊行年:1954年第一刷

 

所要時間:1時間と5分くらい

読みやすさ    :★★☆☆☆

詩のわかりやすさ :★★★★☆

台詞のわかりやすさ:★★☆☆☆

 

○感想

「戯曲って難しそう」のイメージから入ったので、読み終わった後の「内容思ってたより理解できるじゃん!!」という嬉しさがありました。

たまに読めない漢字があったけど文脈で意味は分かりました。

 

やっぱりストーリー自体は単純で、おはなしのスコープも狭いです。シンプルな話を詩的なセリフや演出で色付けして美しくドラマチックに描いているなあと思いました(そりゃ戯曲だからね)。

台詞回しは演劇的で硬い印象だったけど、必要以上に難しいわけではなく、割と理解できる言葉でした。いや、でも「それどういうこと」と思うことは結構あった。ストーリーはシンプルなので、話の本筋の理解に支障はなかったかなという感じです。

 

訳されたのがかなり昔なので、ひらがなの使い方が特徴的で「今、なんて?」となることはあったけど、ゆっくり読み返せばきちんと現代の言葉として理解できました。(※この時点では理解できたつもりになってるけど、他の読んだら理解できてない部分結構あった)

 

詩の部分も思ってたより分かる。いや途中で「えーん、むず」となったけど割と大丈夫。詩の理解があやふやでも人間の心情はきちんとわかる…わかってたかな…不安になってきた…。

 

詩でもそれ以外でも出てくる単語が綺麗。

ゆっくり何度も読み返したいかも。

 

あと、最初に2枚ほど舞台セットのイメージイラストがついていて、少しだけイメージしやすかったです。

そして、本編よりあとがきのほうが10倍難しかったです。

 

沖積舎ロルカ戯曲全集2

書 名:ロルカ戯曲全集2

出版社:沖積舎

訳 者:長南実

刊行年:1984年第一刷

 

所要時間 :50分ちょっと

読みやすさ    :★★★☆☆

詩のわかりやすさ :★★☆☆☆

台詞のわかりやすさ:★★★★☆

 

○感想

開いた瞬間「えー!ぜんぜん違う!!!!」って声に出た。

パッと観た瞬間の言葉の柔らかさ、ひらがなの多さ。

 

戯曲なので初めに登場人物の一覧が載っているのですが、ひとり「①の本の一覧に載ってないけど登場する人」が居まして。

そして、こちら沖積舎の全集には一覧にその人がきちんと載っていて、その人の正体までもが書かれていて、衝撃を受けました。「えー!そういうこと!?」って声に出た。①の読んだ時に「なんだこの人、わかんね~~」と思ってたのに、こちらの登場人物一覧を読んだら解決してしまった。そんな事あるんだ、微ネタバレじゃん。でも理解が深まって助かりました。

 

すごくわかりやすかった…!

読みながら「めっちゃ分かる!」「そういうことだったん!」「なるほどな!」って何度か声に出してしまった。(すぐ声に出す)

さっき読んだ①未来社の血の婚礼、難しかったんだ…ってこれを読んで気が付きました。

ストーリーに改変があるわけではないので、読み終わった後の印象は変わりません。キャラクターの印象も。

 

未来社のものより漢字が少ないので、絵本を読んでいる時と同じ難しさを感じます。ひらがなが多くてたまに突っかかる感じ。その分全体的に柔らかい印象でした。

あと、未来社は「食べる」を「喰う」と表記するなど少し堅い漢字の使い方でしたが、こちらは現代人に馴染みのある漢字の使い方でした。読みやすい。

 

会話部分も、より自然でわかりやすかった。

未来社は単語をポンポン並べていく感じで、言葉が点在しているような。

そしてこちらは単語の間を埋める言葉があることで、単語と単語が一本の糸のように滑らかに繋がっているような。

この本で、未来社の本で理解できなかった言い回しが新たに理解できました。

そして「あ、そのセリフそういう意味か!勘違いしてた!」となる部分もありました。

 

ただ、詩に関しては未来社のほうが分かりやすいかな…。言葉を柔らかく翻訳しているので、回りくどくて少し意味がわかりにくかった。

台詞部分が柔らかい言葉になった分、詩的な表現がくると急に難しく感じました。

未来社はずっと堅い文章だから、なんていうんだろう、脳みそが「演劇モード」にチューニングされていて詩的な表現が突然来ても割りとすんなり読めました。なるほど。

 

いや~わかりやすかった。

もしかして岩波文庫はもっと分かりやすいのでは!?

楽しみすぎる

 

あとがきや解説はありませんでした。

 

岩波文庫:三大悲劇集 血の婚礼他二篇

書 名:三大悲劇集 血の婚礼他二篇

出版社:岩波文庫

訳 者:牛島信明 

刊行年:1992年第一刷

 

所要時間 :50分かからないくらい

読みやすさ    :★★★★★

詩のわかりやすさ :★★★★☆

台詞のわかりやすさ:★★★☆☆

 

 

○感想

まず三大悲劇集ってすごいよね。タイトルが。

 

お~~!これも読みやすかったし、話もとても理解できました。さすがに血の婚礼読むのこれで3回目なので、それはそう。

「その台詞どういう意味?」と引っかかるところはほとんどなかったです。

②で「理解できたぞ!」と思い上がっていた部分も、解像度が更に上がりました。

 

台詞が②よりさらにやわらかく、自然でした。人の会話をそのまま文字起こししたような。

ただ、言い回しが丁寧すぎてキャラクターの印象が①②の時と少し変わりました。全員気品が増したというか、柔らかく丁寧に、おしとやかになった感じがします。そのぶん相対的に怒りの表現が鮮やかになっているような気もします。

 

詩の部分も柔らかく訳されていて、「詩」というより「歌詞」を読んでいるみたいでした(?)。詩の部分も割と口語調に訳されていて読みやすかったです。

①の詩を読んだ時に感じた言葉の美しさの面影はあまりないかな。

 

すごく読みやすくて現代の小説のテンションでサクサク読めたけど、少しマイルドになりすぎな気もしました。

あと、なんていうんだろう。いわゆる「和訳した文章」感が強くて、話し言葉の語尾がちょっと馴染みのない感じでした。言っている内容は分かりやすいけど、会話としては少し分かりにくかったです。

 

会話部分も詩の部分も話し言葉感が強めで、粒度が揃っていて読みやすかったです。

 

さいごに解説がついていて、面白かったです!

 

3冊読み比べまとめ

訳す人、訳された年代によって文章ってこんなに変わるんだなあと思いました。

おもしろい!

 

①は言葉の美しさや詩の美しさを堪能できます。さすが。

大筋のストーリーも分かる。でもところどころ難しい。

 

②は詩の美しさと台詞の分かりやすさのバランスが一番よかった。詩と台詞のギャップがすこし大変だけど、どちらの魅力も味わえる。

 

③はとにかく読みやすい!難しい言葉も出て来ないし、詩も分かりやすくなってる。ただ口語調すぎてストーリーを追うのが逆に大変かも?

 

個人的には②ロルカ戯曲全集2が好きでした。台詞も程よく堅いので、ストーリーが一番頭に入ってきやすかったです。

 

詩は①のものが好きでした。

冒頭に出てくる詩に使われていた言葉が最後の方に台詞として出てきて「なるほどねー!」と思ったりもしました。でもやっぱり少し難しい…。

しかしこの硬質な雰囲気が「血の婚礼」っぽいなと思ったので、①はぜひ読んでほしいです。

 

加筆分:4冊目

ロルカ名作戯曲選 素晴らしい靴屋の女房

タイトルが血の婚礼じゃなさすぎて完全に見逃していた1冊です。

フォロワーさんが「レオナルドが一番美しく感じました」と仰ってたので楽しみ……!読むぞ!

 

書 名:ロルカ名作戯曲選 素晴らしい靴屋の女房

出版社:竹内書店新社

訳 者:小海永二

刊行年:1997年第一刷

 

所要時間 :測定不可(友人と通話しながら読んだため)(何故)

読みやすさ    :★★★★★

詩のわかりやすさ :★★★☆☆

台詞のわかりやすさ:★★★★☆

 

○感想

図らずも最後に読んだものが一番新しく訳されたものだった…!読んだ順番がちょうど出版された順になりました。ラッキー!

 

まず読んだ感想は「さらにマイルドになった!」でした。前述の3冊よりもさらにマイルドに、おしとやかになった印象でした。

地の文(会話文)はもちろん、詩の部分もマイルドになっていました。分かりやすかったな。

会話文は、THE・演劇というか…子供向け海外文学のような言い回しで、文字で読むと少し分かりにくかったです。語尾が丁寧すぎるのかな。飾りの言葉が多くて、読んでいて「……何が言いたいんだっけこの人は」となりました。

でもたぶん、この本に書かれている言い回しでリアルな人間が演じたらとても分かりやすい気がします。詩的すぎず、言葉選びも現代に近いので。心の中に劇場建設するしかないのか。そうなのか。

詩の部分は、1冊目に読んだものと比べるとかなりまろやかに訳されているなぁという印象。訳が新しくなればなるほど、訳者の解釈を通して現代に近い言葉で書かれている気がします。文章としては分かりやすいけど、やっぱり詩は1冊目に読んだものが好きですね。

 

「レオナルドが一番美しかった」というフォロワーさんの言葉はその通りでした。レオナルドとその妻の会話は、気品があって丁寧で、高貴な人同士の会話という印象でした。レオナルドはなんだかとても凛としていて、常に背筋が伸びていそうなイメージ。妻もとても言葉遣いが丁寧で、育ちの良さと品の良さと、内気な性格を感じました。その分、レオナルドが声を荒げたり、妻に対して冷たい態度をとる描写がより際立っていた気がします。

 

花婿に母、そして花嫁も丁寧な言葉遣いでした。

花婿と母の会話は今までで一番分かりやすかった気がするのと、なんか素朴で仲良さそうな印象でした(?)。その後にレオナルド夫妻のシーンがあるのですが、花婿&母と打って変わって「なんかこの人たちやたら高貴だな」と思いました。謎。

 

出てくる言葉や文章の組み立て方はかなり現代に近いので、とても読みやすかったです。「それどういう事?」と引っかかることはほとんどなかった。飾りの言葉が多いので少し物語の理解の邪魔になるかもしれません。

そしてなぜか漢字のルビが少なく「これなんて読むの!?」と気になってやたら調べてしまいました。文章が分かりやすくてサクサク進む分、読めない漢字を見過ごせなくなったという…笑

 

あと、この本は4冊読んだ中で唯一、二段組になっていました。二段組だから読みにくい!ということは全くないです。1ページの文字量が多いのでぱっと見た時の圧はすごい。

ただ、インデントの揃え方が不思議で、読みながらぞわそわしていました。

なんでそんな微妙なインデントなん。なんでなん!?

二段組で改行が多いせいか、「小さい'や'」(ゃ)が行頭にきていたり、不自然に空白があったり……ふしぎ。

 

あとは、文章内の括弧書き(役者への指示)が今まで読んだ中で一番細かかった気がします。この括弧書きでさらに理解が深まった…というか「こんな感じで役者さんたちが動いて演じるのか~」というワクワクが高まりました。たのしみー!

ロルカが描いた(謎の)イラストが入っていたり、章(場?幕?)の初めに舞台セットの説明(構想?)が細かく書かれていて面白かったです。舞台セットの解説は今まで読んだ中でいちばん詳しくて分かりやすかったかも。

 

解説もたっぷり載っていました。ストーリーの解説だけでなく、ロルカが血の婚礼を書くに至った経緯や、血の婚礼の上演に際してのエピソードなど盛りだくさん。ロルカと血の婚礼の歴史がわかるかも?

 

「読みやすかった」と「わかりやすかった」と「わかりにくかった」が混在しているカオスなレポになってしまった。

現代的な言葉遣いで読みやすい!分かりやすい!

物語の理解という観点では、会話文が冗長で少しわかりにくい!

という感じでした。

 

4冊を比べてみて

やっぱり出版年が新しいもののほうが表現がまろやかで、言葉選びと言い回しが現代的で分かりやすかったです。3,4冊目に関しては、内容で引っかかることはほとんどなかったな。

詩は、出版年が新しくなればなるほど小説ぽくなって読みやすさが格段に上がっていきます。ただ、現代的な言葉遣いになればなるほど訳者の解釈が入っていて、原文の意図や表現の美しさは隠れてしまっているのかな?とも思いました。原文読めないから分からないですけどね。これは勘です。

 

どれを読んでも内容は血の婚礼なので(それはそう)、深く気にせず手に取りやすいものを読むのがおすすめです。初日まであと3日!まだ間に合う!でも読まなくてもいい!

 

舞台が楽しみだ~!

読むのに3~4時間かかると思って覚悟して読み始めたのですが、どれも1時間ほどで読めてびっくりしました。読めるやん、戯曲。

さらっと読んだだけなので、後でまたじっくり読みたいな。

 

そしてストーリーはとてもシンプルなので、別に予習しなくても大丈夫な気がしました。観劇した後に詩的な表現の部分を文章で読み返したくなる気がします。

 

あ、そうだ、原作を読むとあらすじ漫画理解できました。すごく良いところで漫画終わってることがわかりました!笑

 

今回は新訳で、観客がわかりやすく、役者さんが演じやすいものになっているそうですね…!(トークショーにて演出家杉原さん談)

楽しみすぎる~!そして台本売ってほしい~~!

 

役者さんの顔を思い浮かべながら読みましたが、みなさん役のイメージがしっくりきます。めっちゃ花婿の母だし花婿だし花嫁だしレオナルドやん。キャスティング天才?

 

レオナルドめっちゃ好きです。やだ~たのしみ~~~~~~~~~!

 

どこで歌うんだろう~とか、ここは舞台でどう表現されるんだろう~とか読みながらワクワクしました。

舞台楽しみだなーー!

 

おわり