ででの日記

好きな話は何度したっていいもんね

ドラマ オールドファッションカップケーキが本当に善かったな

 

ドラマ・オールドファッションカップケーキ、本当に善かったなぁ…。

「どこがよかった?」と聞かれたら「……全部?」と突然IQ3になる。

役者の演技、映像の質感、音楽、物語の構成、各話の副題、どこをとっても「よかったなぁ……」とため息をついてしまうくらいよかった。

サクッと全体の感想をまとめようと思ったらまた長くなったし7割外川の話をしています。

 

 

よかったな…なところ

全員ハマり役

まず全員ハマり役なのがすごい。全員いとおしい。

ドラマ化が発表されてから予習として原作を読みました。カプチーノも読みました。絵がおしゃれで優しい雰囲気で、あたたかい気持ちになれる漫画でした。

 

野末さん

野末は割と女性の理想が詰まっているというか、現実には居ないよね、というキャラだと思います。そんなキャラを3次元の人間が演じるのすごい。武田さんってすごい。

そして御本人のSNSの更新がマメかつフレンドリーなこと。普段の話し方や佇まいがふわふわで癒し系なこと。「この方が野末さん、なるほど…!」となりました。

なにか美味しいものを食べた時の「!」な演技は、本当に周りに星がパチパチと弾けているようで、すごいなと思いました。

あと「おじさん」と劇中で自称しているけど見た目が全然若くて「お、おじさん…?自信持って……!?」と思いました。

 

外川

外川のビジュアルが漫画とドラマで割と違うけど、一体どういう経緯でたつなりさんはキャスティングされたんだろう…すごいな…というのが漫画を読んだ時の感想でした。

実写化は2次元で表現されていたものが3次元に起こされることに一番の意味があると私は思うので、見た目は似てても似てなくてもどちらでも良い派です。似てなくてストーリーもキャラの性格も違ったら困っちゃうけど…。

達成さんは一挙一動一言一句、外川を生きていましたね……。

すませばクール、笑えばキュート。そして深く響く硬めな声。

外川のクールに見えて意外と子供っぽいところ、密かに抱いた恋心を隠しているようで若干漏れているピュアさが、表情と声色から伺えました。クールな外川の内に秘められた沢山の感情が溢れていました。

好きなシーンを挙げたらキリがないですが、常に「とがわー!」と叫んでしまいたくなる演技でした。役者・木村達成、人間を演じるのが上手すぎる……。

私的、ドラマ関連のインタビューでとてもグッと来た達成さんの一言がこちら。

外川的には、節目節目に何かを抱えている部分を、表情であったりせりふであったり芝居をしながらいろいろ忍ばせたつもりです。

この「忍ばせた」という言葉の選び方がとても好きです。忍ばせた。

一見ふつうの会話や態度だけど、最後まで見ると「あれは恋だったんだ」と気がつく、絶妙なバランス。忍んでましたね…。

達成さんが演じる外川を見ることができて本当によかったです。

 

同僚ズ

水石亜飛夢さん演じる中村。

良すぎる。あんな同僚いてほしい。程よくサボったりミスしちゃうけど、憎めない感じ。そして外川と確実に性格が真逆な同期でありながら、ちゃんと外川と仲が良いのが好きです。飲み会のシーンが上手すぎて声だして笑ってしまった。

 

斎藤さららさん演じる河野。可愛かった……。

鮎川桃果さん演じる佐々木。友だちになりたい。

この2人が1話で「そして外川さんも~(グ~!!)」ってやってるとこ大好き。友だちになりたいし同盟組みたい。野末と外川のおかげで仕事が楽しいんだろうなぁ~となりました。

 

坂東駿さん演じる今泉。会社にいそう。わかる。いてほしい。

程よく興味を持って話しかけてくれるけど、深くは突っ込まない感じ。野末さんとはまた違った、常にふわっと優しそうなオーラが出ていて好きです。きっといいひと。

 

吉井怜さん演じる桐島。気品と強さと、ほどよいがさつさを兼ね備えた素敵な方。野末とは違いガンガン昇進する道を選んだ性格もありつつ、昇進するために強くなっていったんだろうなと思わせるかっこよさがありました。

 

全員がこのドラマの世界で自然に生きていて、愛おしかったです。

 

脚本

30分×5話というトータルでも1話ずつでも短い構成にも関わらず、お話が綺麗に収まっていて心地よかったです。すごい。無駄な描写がひとつもないうえに、足りない描写もない。

原作を軸にしつつ、ところどころドラマオリジナルな部分が入っていましたが、ひとつのドラマとしてきちんと物語が成立していて、キャラクターの感情にブレがなくて感動しました。当たり前であってほしいけど、案外そういうドラマって少ないですよね……。

メールの外川のターン、とても可愛かった。あれ原作にはなかったですよね。オリジナル要素は「なぜ」「それいる?」と思ってしまう事が多々ありますが、キャラクターの心情をより鮮やかに描く追加エピソードは嬉しい…。

 

神は細部に宿る。

 

音楽

主題歌がおしゃれ。おしゃれな声ってこういうことをいうんだな。

「何かがはじまりそうだと」という歌詞が聞こえてくるたびにハッとします。この物語は始まりの物語なんだなと気付かされる。

そして劇伴も主張しすぎず、でも彩りを添えていて大好きです。

配信も始まったのでじっくり聴きたいです。

 

神は細部に宿る。

 

映像

ずっとおしゃれ。ずっと綺麗。ふんわりした印象のときと、パキッとクールな印象のときがある気がします。映像が野末さんっぽい時と外川っぽい時があるというか。

映像の質感はもちろんだけど、外川が「もう着ないんですか、三つ揃えのスーツ」と言ったところで顔に光が当たった時は好きすぎてため息が出ました。

 

神は細部に宿る。

 

美術

野末さんの部屋も外川の部屋も、ふたりっぽくて大好きです。おしゃれ。

加藤綾佳監督がとても作品愛に溢れている方で、Twitterで質問返しコーナーをしてらっしゃる時がありました。監督に聞いていいことなのかな…と思いつつ野末と外川のお家のセットについて伺ったらお返事をくださいました。ありがとうございます。やさしい。(送ってから誤字に気づいた…)

野末さんが「退屈な毎日を過ごしている」という割に丁寧な生活をしているのが、なんだか不思議だなと思っていたのですが、監督の回答を読んで「ルーティンな生活 = 雑な暮らし」ではない、という新たな知見を得ました。むしろ丁寧な生活がルーティンの中に組み込まれているんだ、なるほど。野末さんすごいな……。でも衣食住を大切にしていてもなお「退屈な毎日」と感じていたなら、それは相当お疲れ(お疲れ…?)だったんだなぁと思ったりもしました。

 

外川は料理をしない、最低限の自分に興味があるものしか置かない人の部屋感。好き…!インテリアがモダンな感じ。料理はしないけどきちんとコーヒー淹れる感じ。物は少ないけどダイニングテーブルにコーヒー豆が置いてあったり間接照明がおしゃれだったり、自分の暮らす空間にはきちんとこだわっているのが部屋から感じられて好きです。

 

神は細部に宿る。

 

副題

第1話 パンケーキは後悔の味

第2話 彼にお似合いのスーツ

第3話 手料理とボーイズトーク

第4話 死ぬほど好きな人

第5話 2本の傘と降り出した想い

 

5話、文学じゃん。

 

どこをとっても作品への愛を感じました。

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個人的に好きなところ

全部好きですが少しだけ。

 

外川のメンタルが強すぎる

一旦、最終話で外川が泣いていたことなどは忘れてください。

パフェを食べに行って店員に写真撮るのをお願いするシーン、強すぎて「うそやん」と思いました。自撮りの時代じゃないのか。度胸ありすぎないか。さっき外で並んでいる時なかなか目立っていたけれど。

しかし彼にとってはそんなことへっちゃらなのでしょう。それほどの覚悟があって、野末さんをデートに誘っているんだもの。愛ってすごい。

寡黙でクール(外見)な外川がやるからこそ「いや、え、すごない?」というギャップが生まれ、おもしろみが出てて最高だなと思いました。外川何やってもかわいいし何やっても意外性があっておもしろいじゃん。ずるい。

 

そういえば外川はきっと「入社前 肉まんもぐもぐ面接官野末とエンカウント事件」の時にすでに恋に落ちていたように見えますが、そこから5.6年その気持ちを温めていたんですよね。こじらせてんな~、片思い。すごい。よくがんばった。抱え続けた6年も、恋を動かそうと思ったその瞬間も、どちらもすごい。

 

恋い焦がれるほどに憧れていた上司が少しずつ色を失っていく様子を見たら「俺がなんとかしないと」「あの頃に戻ってほしい」と思うのでしょうか。もし野末が若い頃の勢いを落とすことなく生きていたら、外川は入社時から抱えていた気持ちを内に秘めたままだったのかな。

 

基本的にすましてるけど割と全てがだだ漏れている外川

それ以上でもそれ以下でもないんですけど、割とすべてがだだ漏れていますよね、外川。

会社で野末さん以外の人と話している時は、人並みの微笑みを浮かべている時はある(…?)けど、基本的にスンとしててクールな外川。

1話の序盤で野末さんと話しているシーンはまだスンとキメてる。

 

なのに女の子ごっこしてる時にはすでに、嬉しさダダ漏れですよね。うっかり笑みを浮かべて顔を上げてしまい、秒速ですまし顔に戻す外川、いとおしい。

野末さんとの距離が縮まるにつれ、会社でも「にこ…」っとしてる時間が増えていくのが愛おしくもあり面白くもある。

ランチのお店調べてる時の顔がにやにやしてて完全に恋してる顔だった。上司の今泉に話しかけられて、すんでのところでスンと顔を元に戻すのおもしろかわいい。ここ会社やで外川。しっかりして。

 

でもこの「クールにしてるのに気がつけばダダ漏れてる」塩梅が本当に上手だな…と思います……。役者・木村達成、人間を演じるのがうまい……。

 

寡黙でクールそうな見た目をしているせいで全てがギャップになる外川

ずるすぎる。

真顔でいたらクールで寡黙で怒っていると勘違いされそうな顔してるし。真面目そうだし。なんか礼儀正しいし(のちに剣道部出身であることがわかり膝を打つ)。

なのに気がつけば「にや…」「ふにゃ…」ってしてるし、感情表現も意外と豊か。

すべてがギャップになるのズルすぎる。

鉄壁!って感じの顔してるから、笑ったり泣いたりした時の表情により深みが出るのだなあ……。

 

なんか分からんけど妙に説得力のある外川

1話のパンケーキ食べてる時の若干ストーカーめいた外川の発言に対して、野末さんはまず絶対そっち(どっち)にツッコむべきじゃないですか?

「常に野末さんを見て学んできました。朝から晩まで」じゃないのよ。こわいこわい。外川が言うと冗談に聞こえないのも怖ポイント。冗談でなく本気に聞こえるのに「そっか朝から晩まで見て学んできたんだね、うんうん」と納得してしまう。

「今は女の子ごっこの最中です、男であることは忘れてください」もツッコもうと思えばツッコめるけど「そっか…そうだよな…」と思わせる何かがある。

外川が発した言葉には妙に説得力があり、外川に言われたら内容がどうであれ「そうですよね、うんうん」と頷いてしまう魔力がある。不思議だな。

野末さんのふわっとした性格もあいまって、割と常にツッコミ不在なの好きです。

 

野末さんのふとした仕草

くしゃみが上手すぎませんか?これは仕草というより武田さんの演技ですが…。

前述しましたが、野末さんが何か食べて「!」となった時のぱぁっと明るくなる表情が好きです。漫画そのままですごい。輝いてる。

野末さんは聞き上手な感じというか、誰に対しても心を開いてふわっと包み込んでくれる安心感のある仕草…態度…?が多くて見ていてほっこりします。話し方もまったりしてて素敵。それで仕事できるの格好良い。

 

リアルな女の子たち

2話のパフェ屋さんに並んでいるシーン。野末&外川の前に並んでいる女の子たちの「やばくない…?」「かわいい…」合戦から始まり、

「ちょっとイケメンだったね」「結構イケメンでしょ」「ほんとだ」「みてみてみてみて(小声)」「めっちゃイケメン(小声)」

というこのやりとり。彼女たちの中で外川の解像度とイケメン度がじわじわ上がっていき、徐々に声量が小さくなっていくのがリアルで「ふふっ」となりました。

 

各話の感想はまたまとめたいな。

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同性同士の恋愛を描くということ

友人と「男女の恋愛もので片方がもう片方に精神的に掬われる描写ってあんまりなくない?」という話をしたことがあります。

 

男女の恋愛ドラマなら、例えば本棚で本を取ろうとして手が触れ合うとか、道でぶつかって荷物を拾ってあげるとか、それこそ一目惚れとか。たった数秒のできごとを「恋愛のきっかけ」として、最後まで物語が成立することが多い気がします。もしかしたらきっかけなんか必要なくて、もともと仲の良いふたりが惹かれ合ったり、はたまた不思議な運命で惹かれ合うこともあるかもしれません。

異性であるということは、視聴者が、無条件に惹かれ合うふたりに違和感なく物語に入り込める関係であるということ。

 

一方で、同性同士の恋愛ものの中には、仲の良いふたりが自然と惹かれ合い、 結ばれる描写は少ないなと感じます。数えるほどしか見たことないので間違ったことを言っていたら申し訳ないですが……。

なにか恋に落ちるきっかけがあったとしてももうワンクッション、特別に惹かれる出来事があったり、片方がもう片方の心を優しく掬い上げるような描写があって初めて、恋が動き始める気がします。

 

同性同士の恋愛を物語として描くには、きっかけの先に何かもう一つ、心動かすワンアクションが必要で、それは同性同士の恋愛がまだまだ「当たり前」の世の中にはなっていないから。物語の中でどれだけ「当たり前」に描いても、受け取る側の「当たり前」でなければその物語は伝わらないから……なのかな?

 

ちなみに心の弱さを掬い上げる描写というのは、日本の作品に多く、外国の作品にはほとんどないそうです(友人談)。国によって感覚が違うからでしょうか。

そう思うとなんともいえない気持ちになりますね。

 

それはそれとして、人の弱さを掬い上げる描写のドラマチックさが人の心を惹き付けるのだなとも思います。

 

この作品の魅力とは

ただ人が人を好きになり、愛したいと思える人のそばに居たいだけなのに、どうしてこうも障壁に阻まれなければいけないのか。外川が抱え続けていた苦しみ、葛藤、迷い、ささやかな喜び、そして溢れ出す想い。たくさんの外川の感情を目の当たりにして、現実世界を思い返し虚しさを覚えました。

 

外川が涙を流しながら告白をするまで野末が外川の恋心に気がつくことはなかったし、ましてやそれが野末自身に向いているものだとは微塵も思っていなかった。

周りの人だって外川を合コンに誘うし、野末も「君に彼女がいないほうが問題だと思うけど」と呟くくらいには、当たり前のように「外川は女の子が好き」だと思いこんでいた。

 

外川の「野末さんが好き」という想いを透明にしていたのは誰なのか。

 

外川自身なのか、野末さんなのか。はたまた社会の制度か、世間の目か、思い込みか。

常識、普通、当たり前、価値観。

ドラマを見ている間、そういった言葉が頭の中を駆け抜けていきました。

 

きっと全てなのでしょう。

 

外川にとっての「普通」は同性を好きになること。

であると同時に外川もまた「普通」の感覚を知ってはいて、当たり前のように「(自分はそうではないけれど)野末さんは女性が好き」と思いこんでいた。野末だって、もしかしたら同性同士の恋愛に抵抗がないかもしれないし、誰にも恋愛感情を抱かないかもしれない。

 

野末にとって、外川の告白は「普通」を揺さぶられた瞬間だったし、外川にとっても、野末が告白を受け入れてくれたことは「普通」を揺さぶられた瞬間だった。

 

野末にとっての「普通」

外川にとっての「普通」

ふたりが互いの心に触れ、互いの「普通」を揺さぶり合い、ふたりで「ふたりにとっての普通」を創り上げていくところが、この作品の魅力なのではないかなと思いました。

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

自分の「普通」の外側にある感覚に出会った時、

フラットな態度で受け止め、そっと自分の「普通」の範囲を塗り広げられるような、優しく誠実な人でありたいなと、このドラマを見て思いました。

 

いいドラマだったなぁ。

 

おわり