ででの日記

好きな話は何度したっていいもんね

血の婚礼観劇前の私へ 初日の初見の感想を全部ここに置いていくから楽しんでいってください 私より

舞台血の婚礼、初日おめでとうございます!

どうか怪我なく、無事に幕が降りますように………と何度でも願いたくなってしまうハードな2幕でした。

 

初日を観劇してきたわけですが、約2時間半の間に色んなことが起こりすぎて感情の行き場を失いました。

観たものを忘れる前に、次の観劇で記憶が上書きされる前に、初見の感想だけは書き残しておきたい!内容に触れますのでご了承ください。

 

まだ観ていなくて観劇予定のある方はぜひ回れ右でお願いします!演出のネタバレ見ないほうが絶対楽しいので…

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こんなマジの古典演劇とディズニーランドとピューロランドと文化祭とハロウィンが一気に全部くる舞台だなんて聞いていません。(※似ている、ということではなく楽しさのベクトルの話です)

すごく楽しかった。楽しかったという感想が正解なのかは分からないけど、とにかく楽しかった。この先ストプレ観劇が初めての友人そして母を連れて行く予定ですが、絶対楽しんでもらえる!初見の感想聞くのが今から楽しみ。

 

 

観劇前の私へ

観劇前の私が観劇後の私に質問を残していましたので一旦答えましょう

 

potea.hatenablog.com

シアターコクーンどうでしたか

コンパクト!狭いのに、一段一段の段差が高くて凄く見やすい!後ろの方でもかなり近いはず。好きな劇場また増えちゃった。規制退場もスムーズでよかったです。物販がちんまりしてるから結構並んでいた気がする。初日だったからかも。あとお手洗いも劇場のキャパに対して多い気がする。

しかし電波が繋がらなすぎてスタンプラリー全然上手くいかなかった。終演20分後くらいに劇場戻って、事情説明してチケット見せてスタンプラリーさせてもらいました。ありがとうございます。スタンプラリーは幕間と終演後だと電波復活しなくて厳しいかもしれない。中二階にパネル展示があるらしいので余裕持って劇場に行ける日があったら探検したいな~。

 

地面の砂の加減は如何ほどでしたか

砂というより土だったね。思ってたよりふかふかそうだった。初手で上から土降ってきたの最高だった。びっくり。アクセル全開。2幕の体当たりな演技を観た時「地面が土でよかったー!」と心の底から思いました。土ではないけど繊維っぽから皮膚の表面に細かい傷ができて痛そう…。どうか皆さま最後まで怪我なくご無事で…(泣)

 

砂以外になにか飛んできましたか

飛んでこなかった!よかった。でも土掴んで投げててすごかった。そして飛んではこなかったけど、客席に向かってライトが向けられることが結構あってびっくりだった。そして客降りというか客席側から舞台上に上がることが多くてびっくりした。気が気でなかった。

客降りがあったから、ライトが客席に向けられた時(月が出た時?)や舞台上のキャラクターが客席の後ろの方を指さした時に「後ろの方に誰かいるのかな!?振り向いていいかな!?」と結構本気で迷ってしまった。

 

アトラクションでしたか

アトラクションだったー!

ジェットコースターに乗せられてあちこち連れ回されて、止まる度にびっくり箱開けさせられるみたいな舞台だった。まさか血の婚礼を観た自分が「楽しい」と感想を残すと思ってなかった。

幕間にお手洗いに立って、劇場内に戻ってきたら舞台がめちゃめちゃ広くなっててびっくりした。緑のカーテンだと思っていたものは、ライトを浴びたら木になってびっくりした。(緑に見えた私の目がおかしかったのかもしれない)。あの土の丘どうなってるんだろう。後ろから人出てくるのびっくりした。

 

レオナルドのジャケット派手でしたか

派手だった〜!舞台映像だけ見た時は「衣装の色なにごと」と思ったけど、レオナルドの妻も赤いワンピースだし、ライティングと舞台美術(と空間)が合わさると全然不自然じゃなかった。

フェリックス家の血筋は燃える赤、花嫁の血筋は内に秘めた熱意のオレンジ、花婿は隠し持った狂気の黄色(オレンジに染まる手前って感じした)、花婿の母は何色にも染まらず夫や息子への想いが映る黒って感じで、カラフルで、それぞれの血筋の色が目に見えるようで面白かった。そして結婚式のドレスは割とこう…概念だった!びっくり!婚礼のシーンで天井から降りてくる電気がとても好き。花嫁のウェディングドレスみたいなデザイン。

 

レオナルドや花婿や花嫁、歌ってましたか

レオナルド歌ってなかっ…………たよね?レオナルドの歌声聴きたかったといえば聴きたかったけど、あんまり気にならなかったかな。レオナルド独りだけ歌っていないのが逆に強い意志を持った一匹狼感あってカッコよかったし、レオナルドの「周りに染まれない虚しさ、寂しさ」みたいなものも感じました。好きです。

あと例の指笛の音わからなかったー!婚礼のシーンで注意深く耳を澄ませないと聞こえないのかも。

花婿はちょっと歌ってたかな。花嫁も歌ってた!

レオナルドの妻が一番歌ってた。ストプレの中の歌ってやっぱりミュージカルとは違うんだなと思った。赤ちゃんへの子守唄だから優しいささやき声で、レオナルドの妻の心細さを感じた……。子守唄のメロディーすごく好きだったんだけど、子守唄ってあんなに暗くていいのかなとも思った。笑

婚礼の歌とダンスは途中から楽器隊の方たちも舞台上にきて、婚礼の招待客として一緒に楽しんでたのが最高だった。楽しい~~~~

 

馬、どんな感じでしたか

馬出てこんかった〜〜〜〜!!まさかの〜!!!!逆に上演前から「馬で駆け回らずにはいられないレオナルド」って紹介されててよかったかもしれない。馬乗りであることを忘れそう。忘れないけど。でも馬出てこなくてもちゃんと馬の存在を認識さえてくれる演出と演技力でした。すごい。

「馬、乗らないんかーい!」とツッコむところも含めて楽しかったです。

 

決闘してましたか

し、してた…………!とんでもないものをみた。「決闘シーンないんだろうな………」と何かの媒体を読んだか聴いたかして思ったのですが、そんな事なかった。

しかも長期戦だった。想像より全然長かった。あんな肉体と肉体のぶつかり合い、魂と魂のぶつかり合いをあの小さな空間で目の当たりにした私たちは一体どうしたら……。なんか……座って観てるだけでごめんね…こんなに命削ってくれてるのに……みたいな謎の気持ちになった。人ってあんなに速く転げ落ちれるもんなんだと思った。やっぱりやられるのが上手いのってカッコいいですね…。バカの感想になっちゃった…。決闘のシーンはまだ言葉にできないなあ…。どうか怪我なく………。

 

カーテンコールは真面目かハッピーどちらでしたか

真面目だった。ニコリともせず、凛とした佇まいで真ん中に立つ役者・木村達成………。お辞儀の仕方が「誠実」を具現化したようで大好きです。2回目か3回目で須賀くんと目を合わせてふっと表情を緩めてらっしゃったのが、とても好きでした。

カーテンコールではもうレオナルドではなかったけど、ギャルで陽キャ木村達成さんでもなかった。「レオナルドを生きた役者・木村達成」だった。

 

何も考えず感想を殴り書き

演出が楽しすぎる

た、楽しすぎるー!!こんなに楽しい楽しいって感想ばかり出てくる舞台だと思ってなかった。私はストプレの観劇経験が少ないので、ストプレに「難しい」「飽きる」「interestingではあるけどfunnyではない」というちょっと後ろ向きなイメージを持っていました。もちろん生身の人間が演じているものを観る尊さ、おもしろさは理解しているけれど、視覚的な面白さ、楽しさ、はあまり体感したことなかった…。

血の婚礼の原作を読んだ時、文体も相まって、重苦しさ・閉塞感・窮屈感を何よりも感じました。だから舞台も暗くて苦しい感じなのかな~小劇場だしな~と、思ったり思わなかったりしていて。

それがもう、観劇したら全部ひっくり返っちゃった!もちろん息をするのを忘れてしまいそうな2幕は「楽しい」だけではないけれど。

空間の使い方

私は上手側に座っていたのですが、場内アナウンス中に「あ、遅れて入ってきた方がいるんだな、アナウンス中に間に合ってよかったね~!」と思いながらそっと通路に目をやると、黒い衣装に身を包んだ安蘭さん演じる花婿の母。そしてもう一本向こうの通路には真っ黄色な衣装に身を包んだ須賀健太さん演じる花婿。びっくりしすぎて「え!?」って声出しそうになってしまった。客降りの演出ってこのご時世な事もあって絶滅危惧種だと思ってた!とんだサプライズ。舞台だけでなく客席側の空間も使用する演出に、役者が舞台に上がる前からテンションぶち上がりました。小劇場ってこんな感じなんだ…たのしい…たのしい……!

ココナッツの殻ー!

最初のテンションぶち上げポイントは、開演前からずっと話題になっていた舞台上の土。もさ…ふぁさ…感のある土だった。そして上演開始3秒で上から土(ココナッツの殻)が降って来て最高だった。最初から全力すぎる。

劇中に創り上げられる舞台セット

次のテンションぶち上げポイントとしては、花婿がぶどう畑に出かけるシーン。花婿が部屋から出ていこうとする時、思わず心のなかで「どこから出るん?」とツッコんでしまった。そうしているうちに、花婿が壁に手をかけ、白い壁がくり抜かれ、扉が現れる。そして地鳴りのような重低音とともに扉が向こうに倒れ、白い光と もやに包まれた広い空間が現れる……のが!もう!最高にカッコいい……。楽しすぎる。向こう側の広い空間にも同じ土が敷き詰められていて、地続きの地面なのがとても好き。

そして花嫁、レオナルドが壁に手をかけるところも最高。カッコいい。3人が壁に手をかけることで初めて完成する舞台セット。好きです。

座席によってはくり抜かれた向こう側が見えないから、下手中央上手1回ずつ座りたいなあ…センターブロックのチケット持ってないけど…。真ん中の窓はちょっとだけ下手側を向いてるから、下手側に座れば向こう側見えるかな?

ガラッと変わる2幕

幕間に舞台空間がガラリと変わってびっくりしました。そんな大胆なことあるんだ。始まるまでずっと、4つの緑のカーテンがぶら下がっているんだと思っていたんだけど、照明に照らされたら木だった。目おかしくなったんかな。もう…ね…そんなガラリと変わった空間で繰り広げられる2幕の肉体と感情のぶつかり合いといったらもうね…言葉になりません……。

花婿の母が最後に白い枠を持ってきた時は「白い枠だぁ」とだけ思っていたけど、後になってレオナルドの妻が持ってきた枠と中央の上から降りてくる枠が揃った時に「最初の…あの3つの枠か…!」と妙に感動してしまった。

 

衣装と舞台セット

衣装!斬新。色の話は前述したけれど、革のベルト?を各々のスタイルで纏っているのが印象的。あの革ベルト血筋や血統、社会や土地や性別や結婚…ありとあらゆる物に縛り付けられているのを表現しているのかなと思いました。

レオナルドと花嫁が手を取り合い逃げている時はすべて外れて開放的になっていたし。逆に、花嫁の婚礼のドレスはゴリゴリの革ベルトで縁取られたものだったし。誰か(忘れちゃった)が「こんなドレス見たことない!」と花嫁のドレスを見て言っていたけれどあれは満場一致だったと思う。でも背中側がお花みたいになってて可愛かったな。

2幕ではレオナルドと花嫁はすべての革ベルトが外れていたのに対し、花婿の革ベルトは脚の物が残っていたのが印象的だった。花婿は感情を解き放ったけれど、まだ母親など(など?)に縛られてもいるのを表現しているのかな。わからないけど。

逆に、母親は黒い服をずっと着ているからベルトが目立たないのが印象的だった。演出家の杉原さんが「スペインの女性は人が亡くなったら自分で決めた期間ずっと喪服を着ている」と仰っていたから、母親はずっと黒い喪服だったんだよね。偶然かもしれないけど、色が同じでベルトが目立たないことで、母親が縛られていることを忘れてしまっているような、縛られていてもそれを苦にせず力強く生きているのが表現されているように感じました。

花嫁のドレスは、白いペチコートの上に真っ黒で重くて動きにくそうな革の縁取りがよく映えていました。まるで「私は縛られています」と自己紹介しているみたいだった。結婚というものが花嫁にとってどれほどの重圧だったのかを表現しているようでした。

 

そして舞台セットは、白い壁に上からぶら下がる照明機材の影が写り込んでいてとても綺麗でした。全体的に機材が丸見えなのも好き。

あと、舞台の転換の時に舞台上がそこまで暗くならず、大道具を入れ替えるスタッフ(みんなキャップを被ってた)と転換の様子が丸見えなのが好きです。

舞台セットの形状と壁に映る影、そして転換の演出が良い意味でとても「作り物」っぽさを演出していて好きでした。あと、婚礼のシーンあたりから増えるワカメみたいな黒いやつ……。謎ワカメと黒い革ベルト衣装がなんか切り絵とか影絵みたいだなと思いました。

それらと、ビビットな色彩に斬新なデザインの衣装が合わさって、箱庭の中の人形劇を観ているみたいでした。

箱庭の人形劇を外から眺めている気持ちでいると、突然客席側からキャラクターが歩いてきたり、暗くなっていく照明と劇場内を渦巻く重低音が舞台と観客側の世界の境目を歪めてきたり、とても不思議な感覚になりました。おもしろかったな。

 

「目を覚ましなさい花嫁さん」の歌

原作を読んだ時、勝手に「招待客たちが結婚式に浮かれて、花嫁さんに出てきてもらうために歌う明るくて爽やかな曲」というイメージを持っていました。「はやく支度を終えて出てきてよ」みたいなことかと思ってた。

実際に舞台を観たら、とても楽しそうな雰囲気だし音楽も楽しいんだけど、なぜか不気味さも感じました。民族っぽい曲調だから?(本当にどうでもいいですが私は無印良品の店内BGMを聴くと不安になります)

ちょっと不気味な曲調で「目を覚ましなさい花嫁さん」と聴くと、まるでその場にいる全員が「あなたが好きな人は本当に花婿なの?本当に好きな人は誰?この結婚は本当にしたかった?目を覚まして、あなたの本当の気持ちを思い出しなさい」と花嫁に対して問いかけているみたいだった。

 

愛されるべき男、花婿

花婿の「母想いの優しい好青年」→「自身の血に流れる狂気に気がつき、感情を止められなくなる青年」への変貌がすごかった。1幕と2幕で別人だぁ…。

1幕はまず「母親を子供のように可愛がって愛しているけど、"悪いものに取り憑かれたかのような狂気"を見るのはもううんざり」の加減がすごかった。母親のことが大好きだから、嫌いになりたくない…みたいな葛藤を表情から感じました。あとやっぱり須賀くんはかわいい。

婚礼前に花嫁に渡すプレゼントを持っているところ、プレゼントの持ち方がギリギリすぎて可愛かった。全体的に結婚にちょっと浮かれてる感じも好き。花嫁がクールな印象に対して、花婿は柔らかくてあたたかい印象。花嫁とのシーンで、花嫁のことをとても愛しているのが伝わってきたけど、それ以上にこの花婿は愛すより愛されるべき存在……愛されている方が似合うなあと思いました。

2幕は、自分に流れている狂気の血を思い出したかのように表情が変わり、声が変わり、脇目も振らずに突き進んでいく様子がカッコよくもあり怖かった。あんなに仲良しだった空くん(役名がわからない)に対してあんなに怒鳴って突き放してしまうんだもん。決闘のシーンでレオナルドに刺された瞬間の表情が上手すぎてちょっと動揺しました。2幕はまだ言葉にできないなあ……。

 

花婿の母

はぁ…まず、凛としていてとても美しかった。そんな佇まいとは裏腹に、言葉は乱暴で、でも息子のことが大好きで可愛らしさもあって。「ナイフ」という言葉をトリガーとしてパチンとスイッチが切り替わり、淀みなく言葉が発せられるのが、体の中に流れている呪詛が溢れて止まらないようでとても不気味でした。

婚礼のシーンの衣装がとても素敵でした。

花婿の母が一番多くのものに縛り付けられているはずなのに、誰よりも力強く地に足つけて立っていてカッコよかったです。最後の花嫁とのやり合い、カッコよかった…すごかった…劇場に語彙力置いてきたから今はすごかったしか言えないけれども。

1幕の、お家で近所の人とお話してるシーンが可愛らしくて面白くて好き。花婿の母、母親だけでなくちゃんと女の子で居られる時間もあるんだね、良かった、と思った。

そう、近所のおばあさんが!めっちゃかわいい~~!このシーンが初日で唯一笑いが起きたところだったかな?あんなに可愛らしくて声が素敵な方いらっしゃるんですね…かわいい……好き…。

 

レオナルドの妻

好き……。全員好きだけど…。赤ちゃんが泣き出して、1人で寂しそうに子守唄を歌う妻…。妻からは常に寂しさを感じました。レオナルドと妻のシーンはそこまで多くないけど、レオナルドの前では常に少し怯えている仕草で、普段のレオナルドの態度の悪さ……悪さ?高圧的な態度であることを感じました。

寂しそうだし怯えているけど、レオナルドを愛していて彼にその気持ちを届けようと必死なところが好きです。ただ弱いだけでは終わらないのがカッコいい。

教会に向かう時に「あなたと一緒じゃないと動かない!」と言い切ったのカッコよかったです。

あと、花嫁となかよしなの可愛くて大好き。なんかこう…仲悪くならないのすごいなと思いました。

 

花嫁と父と女中

女中さんが可愛らしくて人間味溢れてて大好き。婚礼の支度をしている時の、花嫁との仲良しな様子を一生観ていたい。

そして花嫁の父!!ユーモアに溢れる陽気なおじちゃんという感じでとても好き。花婿の母とのコンビネーションが抜群で二人の掛け合い観てる間ずっと笑顔だった。お似合いの二人だなと思いました(そこが?)

 

そして花嫁。出てきた瞬間に、自身の感情をすべて隠しているんだなということが伝わってきました。「結婚を控えている女性」として必死に振る舞ってた。

そして花婿たちが帰っていってから秒速で態度デカくなるの最高だった。

婚礼当日、花婿を愛し(可愛がり)っているのも伝わってきたけど、だんだんとレオナルドに気を取られていって、心の針が少しずつ花婿からレオナルドに傾いてくのが見て取れてすごかった……。

「でも私は花婿と結婚する」という意志の強さと、それと同じくらいの強さの「レオナルドが忘れられない」という想いが花嫁の心のなかで闘ってた。

 

レオナルド

好きです…。本を読んだ時、レオナルドひどいやつだなあと思ったけれど、いざ観劇してみたらそんなことはなかった。

独りだけ歌わないレオナルド。誰とも目を合わせず、常に誰かを鋭く睨みつけているレオナルド。常に苛立ちを感じ、妻に高圧的な態度を取るレオナルド。一見ひどい人だけど、固く閉ざした心の内にやわらかな気持ちも持っているレオナルドだなと思いました。

妻と最初に言い合うシーン。(馬の蹄鉄の話してるとこ)

妻への口調は意外と優しくて、いつも機嫌が悪いわけでは無いんだと安心しました。ちゃんと心の柔らかい部分も持ってた。そして少しでも彼の気に障ることがあるとピンと張っていた糸が切れるかのように態度が一変するのが怖かった。怖いけど、自身の気持ちを処理する方法を知らないから物に当たったり、すべての感情を「苛立ち」に変換してしまっているように見えました。何だかとても可哀想だった。

 

フェリックス家の人間だからと、小さい頃から周りに敬遠されて生きてきたのかなと思いました。だから愛されることを知らなくて、誰かを愛することに情熱を捧げていたというか。どれだけ妻から愛されていても、レオナルドは愛することでしか満たされないんじゃないかな。だから花嫁のことが忘れられなかったのかな。

 

レオナルドのことはもっと考えまとまってからにします。

 

木こりズ

木こりって!勝手に仙人みたいな風貌をイメージしていたんだけど、とてもスタイリッシュ木こりズだった!探検隊みたいで可愛かった。衣装が急に現代的になってびっくりしたな、かわいい。

何故木こり=仙人みたいな風貌を想像していたのか考えた結果「あなたが落としたのは金の斧?それとも銀の斧?」的な話の、湖から出てくる方の人を思い浮かべてるからだった。あの人木こりじゃないわ。

20年以上続いた勘違いがここにきて解けてよかったです。また一つ賢くなった。

 

忘れない、月が出てきた瞬間、一瞬客席の時が止まったことを。満場一致で「……なに?」となったと思う。まさかあんな現代的な色遣いとデザインのフロートに乗って出てくるとは思わないじゃん。たしかに「特殊衣装がある」とは聞いていたけど、光集めるタイプの衣装だとは思わないじゃん。風の抵抗をもろに受けるタイプの。いや何?

月って、顔を黄色く塗って出てくるとか頭に黄色い丸いかぶりものしてるとか、そういう事かと思ってた。銀か…そうか…超輝いてたわ……集まってたな、光。「月に照らされたら見つかってしまう」みたいなニュアンスの言葉が原作を読んだ時好きだったんだけど、そうだなこれは確かに照らしているな…。

月が出てきた時に笑っていいのかわからなくて困惑してたら、パチリ、パチリ、と拍手が聞こえてきて、最終的に会場全体で月の登場に拍手をしたんだけど、拍手が起きるまでの間に若干間がありましたからね。あの時みんな(何?)(笑っていい…?いや誰も笑わん)(どう…どうしたら…)(感情の行き場)(そんなことある?)(着こなしてる安蘭さんすごいな)(いや何?)(これから本当に決闘するんか)って思ってたと思う。しらんけど。インパクトすごーい!楽しーい!笑

決闘終わってからもう一回出てきた時「いやまだおるんかーい」って声に出そうだった。楽しすぎ。感情の行き場を失った。あと月が言ってること1文字も聞いてなかった。次はちゃんと聴くぞ

 

花嫁とレオナルドの逃走

まさかのスローモーションだった。筋トレすぎる。ゆっくりな筋トレが一番きついですからね。

劇場に語彙力置いてきたので今は何も書けませんが、熱く抱き合ったり手を取り合ったりする動きに合わせて音がバチバチにハマるのが気持ちよかったです。

 

決闘

こんなにすごいものを観てしまっていいのかと思った。これも劇場に語彙力置いてきたし全然消化しきれてないのでいつかまた。

とにかく怪我なく最後まで走り抜けてほしいです。

床がココナッツでよかった。本当に。

 

そういうことだったのか~!と思ったところ

レモネードのくだり

レオナルドの妻がレオナルドにレモネード(レモン水だっけ)が要るか尋ねる場面。本を読んだ時はレオナルドの返答が「うんと冷たい水で頼む」みたいなニュアンスだった気がするんだけど、上演では「水でいい」だった。なるほど~~!

本を読んだ時「あ、こういう時でも妻に甘える…というか自分の要求を受け入れられる前提でいるんだな、亭主関白って感じだな、怖いなあ」と思っていたのだけど、観劇したら「うわー!こっちのほうが怖い、嫌だ」と思いました。妻の「レモネード飲む?」という提案を「水でいい」とそもそも受け入れてくれないという……怖っ……。心のシャッターガチガチやないか。そしてその後、水の入ったコップを机にゴンですから。水ってあんなに縦方向に飛んでいくんだと本気で衝撃を受けました(そこ?)

 

花嫁の「離して!」

花嫁が花婿に後ろから抱きつかれて「離して!」という場面(やめて!だったかも)。本を読んだ時は、レオナルドや婚礼(を本当に続けていいのか)の事で頭がいっぱいで、ただ気が尖っているからそう言ったんだと思っていたけれど、

早見あかりさん演じる花嫁は「レオナルドを好きになってはいけない、顔を見てはいけない、どうしてこっちに来るのよ!」という想いが滲み出ていて、「なるほど…………」となりました。あのシチュエーションで抱きつきに来たのがレオナルドだと本気で思っているし「やってはいけない」と自身に強く言い聞かせているように感じた。すごい……

 

もう一個くらい「なるほど~」と思ったところあった気がするけど忘れた!

 

まとめ

舞台の遊び心と人間の真摯な演劇を存分に浴びることのできる舞台、血の婚礼。

この舞台を観ることが出来てよかったです。邦生のこと大好きになっちゃった。

今はとりあえず、2回目以降の観劇で月にどういう気持ちで挑むかだけ考えています。

 

おわり。