ででの日記

好きな話は何度したっていいもんね

舞台血の婚礼 東京公演完走おめでとうございました

舞台血の婚礼、誰1人欠けることのない完走、本当におめでとございます。そしてお疲れ様でした。

なんか……考察もたくさんして文章に残していたんだけど、東京千秋楽を観たらどうでも良くなってしまった。

 

キャラクターそれぞれの心の機微について考えることも楽しかったし、演出も何度見ても楽しかった。でもやっぱりこの舞台の一番よかったところは、汗と土にまみれながら、生身の人間が肉体と言葉と感情をぶつけ合っていたところだと思います。

こんなに人間が感情を200%放出して、目の前の人に何かを伝えようと、自分の想いを曝け出そうとしているのは初めて見ました。あんなに激しい肉体のぶつかり合いも。

原作を読んだときは詩の部分は一文が短いのもあって、淡々とした印象でした。それが三次元になって、生身の人間が肉体と言葉と感情で表現したらああなるんだという。とても良いものを観られたな、良い体験ができたなと思いました。観られてよかった。

 

そしてこの舞台への印象は「安定」でした。公演毎の違いはあまりなくて、レオナルドと花婿が少しずつ変化したかな?くらいな気がしました。(※個人の感想です)

初日は荒々しく棘のあったレオナルド。だんだん妻に優しくなる瞬間が増えて、その分哀しさも増していきました。ただのひどい男だけではない、たくさんのものを背負った人間でした。そして千秋楽に近づくにつれて、また初日のように荒々しい姿に戻っていったのが印象的でした。

花嫁とのシーンでは、最初の方は「俺について来い!(自信満々)」みたいなイメージだったけど、回を重ねる毎に自分が殺される未来を察して、花嫁とふたりきりの時間を切なく愛おしく「この時間が終わらないでほしい」と想っているようでした。

花婿は最初は「良い子」のイメージが一番強くて、自分の感情を全て押し殺している人という印象でした。それが公演を重ねていくと、最初の母親とのシーンで少しずつ怒りや苛つき、母親への反抗が見える瞬間が増えたのが印象的でした。

花嫁はあんまり変化は感じなかったけど、全体的に感情表現が激しい日とそうでない日があったように思います。

花嫁はキャラ的に1番「?」が多くて、悪い印象を持たれるキャラだったなぁと思います。それを1人で背負って舞台に立ち続けたあかりん、本当にすごいと思います。オフショットの笑顔を見るたびに嬉しかったし安心した……。千秋楽直後のコメント動画での涙が彼女の背負っていたものの大きさを物語っていますね。

「終わってよかった」という言葉を聞いて若干泣きそうな表情をしている達成さん……。ふたりで支え合ってこの舞台を駆け抜けたんだろうな……。

 

安蘭さん演じる母と月。いつでも安心安全。序盤のシーンの母の「ごめんね」が毎公演違うのが印象的でした。

千秋楽で月の登場が拍手喝采で良かったです。

 

レオナルドの妻、そして樵の南沢奈央さん。妻の時は弱々しく何か(レオナルド)に怯えている&母としての覚悟の両方を併せ持っていてカッコよかったです。最後の「美しい馬の乗り手だった」と宙を見上げる姿が好きです。

そして樵になったら少年のようなしっかりした発声で、最初は誰が演じてるのか気づかなかったです。かっこよかったな。

 

パンの若者。なぜか釘付けになってしまう。どんどん上手になってた…!婚礼のシーンで謎に花婿の母親と気まずくなって「あ、ども…」ってなってるシーン大好きでした。

 

こどもたち。3人とも歌も演技も上手でした。ちこちゃんのお姉さん、大学生?だけどちゃんと子供で、わざとらしくなくてすごかったです。3人とも可愛かったなぁ。婚礼のシーンでHAMAさんと麦さんの間を抜けて走るところが可愛くて好きでした。

 

花嫁の父。いやそんな陽気で愉快なおじいだと思ってませんでした。花嫁と真逆!最高!さすがとしか言いようのない佇まいと演技でした。婚礼の時の歌がめちゃ好きです。踊ろうとしてタオル落としちゃった回があったのLOVEでした。

乞食役も、恐ろしい存在なはずなのにどこまでも可愛くて好きです。愛おしい。

 

村の女と女中さん。可愛さと面白さが詰まったお二人で大好きです。千秋楽では村の女はより面白く、女中はより可愛らしくなっていて最高でした。

 

千秋楽の花嫁とレオナルドの逃避行、いつも通りとても良かったです。公演期間の途中から、溶け合わすところが立ちから膝立ちになったのが好きでした。膝立ちだと、広い舞台の上にちんまりと2人だけで、より「ふたりの世界」を感じて好きでした。

それにしてもあのシーンを毎公演安定して演じていたのすごいな……。何回か滑ってしまったり、握るはずの手が抜けてしまったり?ハプニング回があったようですがレオナルドがカバーして乗り切っていたとか…観たかったな…(観た回全部ノーミスだった)

最初のスローモーションの美しさもすごいし、そのあとくるくるっと回ってドン!とスピーディーに2人の掛け合いが始まるのが大好きでした。息切れせずに動きながら台詞を言うの凄すぎる。本当に大きな怪我なく千秋楽を見届けることができてよかった。

あの一戦だけで大変なはずなのにこのあと花婿ともう一戦交えるレオナルドすごすぎる。泣いちゃう、私が。

 

千秋楽のレオナルドと花婿の決闘、すごかった気がする………。レオナルドが足を怪我した後の動きが凄すぎて、私は彼が本当に怪我をしたんじゃないかと思って、ちょっと泣きそうになりました。普通にカテコ走って出てきて「よかったー」と「嘘やん」が同時に来ました。演技だったんあれ。

脚を刺される前に右足怪我してる気がするけど、レオナルドいつのまに…と毎回思ってました。あと脚を刺される時の脚の角度が好きでした(何?)。

花婿が登場した時の表情が本当に怖くて最悪で最高でした。

 

決闘シーンを見て、やっぱりレオナルドの一人勝ちだなと思いました。

花婿は結婚するつもりだったのに結婚できなかったし、嫁取られてるし、奪い返そうとして奪い返せず死んでしまった。

レオナルドは束の間ではあったけど、花嫁とふたりの時間を過ごすことができた。愛し合って、ふたりで同じ未来を見据えることができた。花婿が来てからも、レオナルドは花嫁を守ろうと闘うことができた。結局殺されてしまったけど、レオナルドは花嫁と愛し合い、花嫁を守ったところで人生を閉じることができた。

やっぱり1番可哀想なのは花婿ですね……。何も残ってない……。残された花嫁のことはどうしても可哀想と思えないけど、これから生きるのきっと大変。がんばれ。

あ、でも1番可哀想なのはレオナルドの妻か。そもそもフェリックス家の人間ではなかったのに、レオナルドと結婚したことでフェリックス家の1人として世間に見られているし。夫には愛されないし、その夫は殺されるし、子供2人を抱えて生きていかないといけないし。「元カノと結婚式当日に駆け落ちした男の嫁」として見られるからきっと生きるの大変だし……。

うーん、でも、キャラクターそれぞれの立場になってみると、全員可哀想。どのキャラクターの目線になるかによって、見方の変わってくる舞台だなと思いました。おもしろかった。

婚礼の日が悲劇の始まりではなく、そのずっと前から、それこそこの土地に各々が生まれた時から悲劇は始まっていたのかなと思いました。

 

やっぱり木村達成さんのことは全然分からないなと思いました。それが彼の魅力だなと思うのですがね…!

レオナルドという役を、この身体的に大変であろう舞台を、一体どういう気持ちでやっていたんだろう。たのしかったかな、辛くなかったかな…と無駄に心配してしまう。もちろん彼はプロだからそんな心配は杞憂だと思うけど。血の婚礼はオフショットとかラジオとかその他諸々が豊富で、役者さんたちの仲良しな様子がたくさん伝わってきて嬉しかったです。それが無かったらこちらの情緒おかしくなってたと思う。邦生の部屋で大笑いする姿を見られて安心しました。

 

そんな折に達成さんがステージぴあ(https://r.binb.jp/epm/e1_260169_01092022113217/)で言っていた言葉がとても好きだったことを思い出しました。

ー舞台経験豊富な木村さんが、カーテンコールに悩むとは意外でした。

木村 すごく悩んでます。最後にお客さまの心にはんこを押す役割ですから、カーテンコールは大切ですよ!

お客さまの心にはんこを押す役割。なんていい言葉。これを読んだ時、そっか、カーテンコールって私たちが感謝を伝える場だと思っていたけど与えられているのは私たちだったんだ、と驚きました。カーテンコールに対してそんな風に考えてらっしゃったんだ…とじんときました。

君嘘の時はハッピー仲良しカーテンコールで毎回挨拶もあって、観客の心をほぐしてくれるようなカーテンコールでした。

今回は終始凛とした表情で、作品の世界を壊さないよう、観客が感じたものを崩さないように徹しているカーテンコールだなと感じました。

どちらも素敵。

そして千秋楽はスタオベありの全5回。そして5回目で達成さんが顔をギュッとしてらっしゃるのを見て、初めて心の内を覗けた気がしました。もちろんあの表情がどういう気持ちの表れだったのかは想像しても100%は分からないけど、少しだけ見せてくれたあの表情は忘れられません。胸がいっぱいになりました。千秋楽で、心に特大のはんこを押してもらいました。

これからもきっと作品毎に違った色の違った柄のはんこを押してくれるんだろうなぁ……。

次の舞台「管理人」はどんなはんこかな。楽しみだなあ。

 

血の婚礼、良い舞台でした。大阪公演もどうか怪我なく無事に幕が降りますように。

おわり。